会長挨拶

 第16代の日本計画行政学会会長を拝命いたしました。初代会長の中山伊知郎先生は、学会設立時の「アッピール」で次のように指摘されています。すなわち、「計画（プランニング）は行政（アドミニストレーション）によって実現される。そして社会は無数の計画と行政によって動いている。しかし、残念なことには、計画と行政との関係は十分に満足すべき状態にはない。計画の源泉には思想と科学があり、行政の基盤には組織と技術があって、それらが相互にからみ合っているからである。」という認識のもと、計画と行政との間の溝を埋めることを念願して、本学会を設立したとされています。

このような趣旨から本学会は設立当初から学問領域の枠にとらわれることなく学際的な取り組みを進めるとともに、計画の理論的方法論、計画の決定に至る行政過程、計画の実施過程を経て結果を次の計画策定にフィードバックすることにより、自律的発展力を備えた学問体系を目指しています。最近の言葉でいえば、PDCA（Plan, Do, Check, Action）サイクルをカバーした取り組みといえますが、50年近く前の1977年の学会設立趣意にこうした内容が明記されている点は、強調しておきたいと思います。

上記の観点から、計画行政を対象とする学問は人文科学、社会科学、自然科学のあらゆる領域に及ぶと同時に、その担い手は学者・研究者、国や自治体の行政担当者、企業、市民など多様です。2014年に本学会を一般社団法人化した際に、計画行政の英語名称をPlanning AdministrationからPlanning and Public Managementに変更し、従来から公的な計画の実施を支えてきた国や自治体といった主体だけでなく、広い意味での公共空間の計画に関わる企業やNPOなどの主体を含めて、計画と公共経営との関係を扱うようになりました。

本学会の特徴として、学会誌の発行や学術論文の審査、年次大会の開催など学会活動の基本的な部分に加えて、専門部会の設置、各地域での支部活動、さらには比較的若手の会員の活動が活発であることなどが挙げられます。専門部会は特定のテーマに関心がある会員によって構成され、議論した成果を学会誌の特集記事や年次大会のワークショップなどで紹介していただいています。また、全国に7つの支部があり（2024年6月に中国支部と四国支部が統合）、それぞれ年次総会や研究会を開催するなど、支部独自の活動を展開していただいています。さらに、学生会員数は100名近くで、国や自治体、企業などに所属する若手の会員を含めて、本学会の活動の一翼を担う存在になっています。

本学会は、2027年に創立50周年を迎えることになります。2024年6月に開催した公開シンポジウムでは、「計画行政学の体系化に向けて―学会創立50周年を見据えたキックオフとして」と題して、本学会が設立当初から掲げていた学問領域としての体系化に向けて、今後取り組むべき方向性について議論しました。そのなかで、「計画行政」という用語を生み出すに至った過程や本学会が設立された当初から「行政」を担う主体を公的な組織だけでなく幅広くとらえていたことなどを共有しました。今後、会員の皆様とともに50周年に向けた取り組みを進めていきたいと考えています。

一般社団法人日本計画行政学会　第16代会長　村山 武彦（東京工業大学教授）